結婚できない男-中野に住むとある男のとある一日編

夏らしくとても暑い外。夏はそもそも暑いものであるからして、この暑さに対してその元である夏に怒りを覚えるのは野暮ってものだ。
そんな夏らしい夏を感じさせる外から帰宅して、まず最初に喉ごしがひんやりとするくらいに最高に冷えたビールを冷蔵庫から急ぐように取り出す。そして、そのビールをごくごくとしながら、好物であるお寿司をつまむ小さな幸せ。自分にとってこのひと時は、村上春樹がいうところの"小確幸"なひと時であることに少しの間違いもなかろう。
たいして面白くもないTVに対して一人毒つきながら、デザート代わりにこれまたひんやりとしたアイスクリームを食べるひと時もまた捨てがたし。時間が経って、とろり、と生あたたかく溶けたバニラクリームのちょっと毒っ気のある甘たるさったら!! 
ふと、久々に何年ぶりかに目のいった一冊の漫画を何気なしに読む。その本は、よしもとよしともの「コレクターズ・アイテム」だ。
「この本は確か一緒にイベントやってた女子から貰ったんだよな」。そんなことを思いつつ、ちょっとユーモアがあって、そしてかなりナイーブな短編作品を一つ一つ読み進めていく。
よしもとよしともの作品を読んでいたら無性にスピッツの"青い車"が聴きたくなってきた。ウィンドウズのパソコンを立ち上げ、アップルの音楽管理ソフト「iTunes」でスピッツをセレクトする。
適音で鳴っている、どこかよしもとよしもとによって描かれる漫画の中の世界観と同期しているようなスピッツの歌を耳にしながら、ふと当時撮った写真が収められているアルバムをめくり出す。そこには、今も親しくしている友達や、今はほとんど顔を合わせなくなった人達や、そして今よりも若干若さの窺える自分が写っていた。自分では当時から今日まで途切れることなく一日一日が続いていて、そんなに変化なく穏やかに時は過ぎている気がしていたのだけれども、気づけばあれから約6,7年という時が過ぎて、それ相応に変化を経て今があることに気づく。そんな極々当たり前の事実にちょっとした驚きを覚えつつ、いつしか気づかぬうちに眠りについている2006年8月21日の夜であった。