●「アニーホール」(DVD)
アニー・ホール [DVD]
ここ最近のウディ・アレン・及び彼の関連作は(自分が思っている以上に)一通り観ているはずだが、過去の作品は観たり観なかったりなんて感じ。そんなわけであらためて「アニーホール」を観ることに。観た後の感想を一言で言うと例によって「またあらためて観たくなる映画」といった感じ。己のゆるぎなく徹底されたユダヤ人としての認識を絶妙な皮肉交じりのユーモアで笑わせる作風はすでにこの頃から確立されてるのね、とかあらためて思いつつ観る。ウディ・アレンのまるでジェット・コースターのような饒舌は、とてもおかしくて笑えるけれども、同時に哀しみに溢れて笑えなくもあって、時には自分がどのような心持ちでその映画を観ればいいのが思い悩まされるような感覚を覚えることも多々ある。あるのだけれども、その感覚というのは不思議と気持ちよいものでもあって、そんな感覚に陥らせてくれるのはやはりウディ・アレンしかいないんだな。愛と哀。それは、出会いであり、別離であり、セックスであり。アニー・ホールという一人の女性によって、そんな深遠なことをあれこれ、自分も思わされたのであった。
●「ブロークン・フラワーズ(theater)

ジム・ジャームッシュ監督の新作。一言でいうと可もなく不可もなく...なんて感想をつぶやきそうになりがちなのだけれども、つまらない作品かといえばそんなことは全然ない。「くすっ」とか「にやり」と笑えるシーンはいくつもあるし、ジャームッシュ特有の映像美(個人的には主人公が夢を見ている辺りの映像は好きです)を満喫できるシーンもきっちりある。全体としての褪せた色彩感に、今作の象徴として表現される"ピンク"はとてもにくいくらいに映えているし。だから、どうにも痛快に「面白かった」と言い切れないこの"感じ"というのは、この映画の物語の根底にあるテーマや、そのテーマを各々掴み取って分かりやすくも味わい深く演じ切れている俳優陣の確かさからくるものなのであろうと。染みそうで染み浸らない、あくまでも"渇いた"感じがさすがはジャームッシュさんって感じだな。